2008年10月の日記:[以前の日記]
 
 
10月30日(木)
 
 
NUUとリハ

 実に久しぶりにNUUとリハ。もう全部忘れたかも、と言いつつやってみると、まだ「だいたい」覚えていた。僕のノーミソにしては優秀。場数はチカラなり、です。ここのところ小松亮太ツアーの練習にかかりっきりだったので、久しぶりに「違うこと」をやった気分。改めて歌の伴奏が、自分の身の丈に合っていることを実感。
 僕は常々、自己認識としては、「楽器奏者」というよりも「音楽の場作り屋」デアルという意識が強く、「その曲、その音楽の『土俵』はオレが作るからその上での相撲は他の人が取ってくれ」という発想で音楽を続けてきた。歌の伴奏というのは、まさにそういう発想と相性がいいのであって、歌伴がおもな仕事になってしまうのも理由があるのである。しかしそれは、楽器奏者としてサボってきた、という言い方も出来ないではなく、今回の小松さんのツアーのようなタイプのものは、ムリヤリでも自分を「楽器奏者」「ギタリスト」として再構築せざるを得ない内容も伴うのであって、普段サボっている身としては、反省することも多い。日々勉強、でございます。
 なお、このリハは直接には7日の「Ouchi-ten Limited Live」のリハだったのだが、今年はそのあとも、いわき市での小ライブツアーや12月25日東京での「植木等生誕祭」があって、それらの選曲などについての打ち合わせも併せて行う。「植木等」では黒川さん(クラリネット)と渡辺亮君(パーカッション)とで「ごますりトリオ」なるバンド?を結成、NUUのバックを務める。それにしても、なんというネーミング。
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10月29日(水)
 
 
タンゴとショーロのハザマで。

 1日から始まる小松亮太「リオとブエノスの果実」ツアーの最終リハ。あとは初日の会場 琵琶湖ホールでの前日リハを残すのみとなった。このツアーは、小松さんにとっては「ブラジル音楽との遭遇」がテーマなのだが、僕にとっては「タンゴのとの遭遇」がテーマでもある。先日も記したとおり、今までタンゴは「鬼門」だったのだが、今回小松さんに声をかけていただいたのを機会に、敢えて挑戦してみることにした。相当悪戦苦闘しているのだが、日々新たな発見もあり、楽しみな部分も多い。
 タンゴはザッザッという重いリズムがその特徴で、それは、ブラジル系の波乗りをするような先に先に進んでいくグルーヴとは全く正反対で、「パラ・アトラス」(=ウシロにむかえ、と訳すのかしら?)という指示を出すマエストロがいるというぐらい極端なものなのである。つい肩を怒らせてチカラを入れて演奏していると、「むしろチカラを抜いて演奏した方がいいですよ」という、小松さんのアドバイスが。ナルホド、チカラの抜いて、ドサッドサッというニュアンスで演奏するのがいいのか・・、などなど、勉強の日々。
 で、小松さんにとっての「挑戦」であるところのショーロの方だが、ブラジル音楽を初めて演奏するメンバーが2名いるので、ということで、ショーロの超有名曲「カリオカの夜」を実に久しぶりにちゃんと聞いてみて細部を確認したところ、思っていたことと違うことが多くて、ビックリ。また、ヴァイオリン&バンドリンで参加する近藤クロちゃん作のショーロが、これまたメチャクチャ難しくてビックリ。ショーロにまで足をすくわれかねないとは、少し腹立たしい。
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10月25日(土)
 
 
アン・サリーと、神戸にてコンサート

 朝の新幹線で神戸へ。本日はスウェーデンの歌姫ソフィア・カールソンのグループとアン・サリーのジョイントライブである。ソフィアのグループの音楽は、アコースティック系のポップス、と言っていいのかどうか、本来はトラッド系では無いようだが、初めてのアジアでの公演ということで、特別にトラッドものをレパートリーに多めに取り入れていた模様。それでも、ちょっと音響系なカンジのサウンドが出てきたり、ブラジル音楽のパーカッションのアイディアが随所に見えたり、と、いろいろな音楽的背景のありそうな人達であった。彼女の歌は、音が柔らかくて高いところがふくよかで、とても気持ちが良かった。
 彼等は英語は普通に話し、そして勿論スウェーデン語を母語としていて(聞いていると、ドイツ語に似た感じの言葉だった)、初めに英語でなんとか会話をしようとしたのだったが、もう二言目あたりに絶句してしまう体たらく。あんなにコドモのころは英語を勉強したのに、いったい何だったのか。ところがパーカッションのオレさんがポル語を話すことが判明。やっと、何とか「会話」が成立する流れに。
 で、判明したことによれば、彼はブラジル音楽が好きで、時々ブラジルを訪れている、とのこと。パンデイロをセルシーニョに学んだそうで、おお、共通の知人がいたっ、と盛り上がったのであった。ブラジル音楽は素晴らしい音楽だけど、それはブラジル人がやるべき音楽であって、それに影響を受けている我々には、もっと別のアプローチがあっていい、というところで、完全に意見一致。握手をして別れてきたのである。

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1225013384.jpeg またそんなことを。

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10月24日(金)
 
 
新大久保アールズアートコートにて、桑江知子さんコンサート

 いつだったか、桑江さんに「ゆったりした曲が、一番いい味が出ますね」みたいなことを申しあげたことがあったのだが、桑江さんも、実は好きな曲はバラードばっかり、なのであった。というワケで、今は「秋」ということもあって?殆どバラードばっかり、という選曲でやることに。
 普通プログラムを組み立てる時には、ダレないように緩急取り混ぜて、ということを意識するのだが、今日は、1曲目からゆったりした曲を続けて4曲、お客さんは寝てしまわないかしら、などと言いつつ、その後も、ずっとそんな調子で終演まで。これが結構ハマりました。やっていて、気持ちが良くて全然飽きない。ピアノの鬼武さんもヴァイオリンの江藤さんも、同じ意見だったようで、やはり好きなモノを歌う、というのが歌手にとって「最強」であることが、判明。
1224900966.jpeg 「プリティー三人娘」(自称)

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10月20日(月)
 
 
タンゴ・・・・(汗)

 11月から始まる、バンドネオン奏者小松亮太さんのツアーの初練習。このツアーのテーマは「リオとブエノスの果実」ということで、これはつまり平たく言えば、小松さんがブラジリアンフレーバーなモノに挑戦する企画、ということなのだ。
 しかし、小松さんにとってはう〜んとブラジルに近づいたつもりのものでも、僕から見るとう〜んとタンゴ寄りに見えたりもする。ショーロとタンゴは、その発生時期においては「兄弟」のような音楽だったのだが、今や似ても似つかぬ(という程でもないけれど)容貌を呈しており、それをまた日本人の、それぞれの音楽にドップリだった演奏家が「一致点」を探りながら演奏する、という、複雑に錯綜した仕組みを持った企画だったりするのである・・。
 しかしっ、そんなことよりっ。オレ、タンゴの演奏、苦手だったんだぁぁ。どうしよーっ。タンゴの大将のような小松さんと、タンゴ(正確にはミロンガですが)のデュオすることになってしもうたぁぁ。(どれだけタンゴが苦手であるかは、2006年7月21日のダイアリー参照。)これは、渡辺貞夫さんのセッションでソロを取らされまくった時(どれだけピンチであったかは、2007年5月24日のダイアリー参照。)に匹敵する人生のピンチである。誰か助けてくれないか??
 
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10月18日(土)
 
 

立教大学太刀川記念ホールにて、松田美緒と「立教大学ラテンアメリカ研究所主公開講演会」出演。

 立教大学文学部の丸山浩明教授の「映像が語る日本移民の姿」なる講演と抱き合わせで、松田美緒とともに「歌とギターでつむぐ日本とブラジルのAmizade」というテーマで講演ならぬ公演を行う、という趣旨の一日。大丈夫かいな、というカンジだが、一番心配していたのは、僕と松田美緒の二人だったかも。
 しかし、実際に音を出してみると、音響的にも大変具合が良く、お客さんもラテンアメリカに興味のある人達が中心なだけあって、最後まで集中して聞いていただけて、大満足なパフォーマンスとなった。松田美緒とは、最後にデュオでライブをやってからもしかしたら2年ぐらい経っているのだが、1時間半の公演を、随分と内容豊かにこなすことが出来た。これは、今後に繋がる。なかなか「実りある」ライブとなった。
 松田さんは、このあとブラジルのヘシーフェにて女優デビューを果たすそうであるが、帰国後、12月には、ショーロクラブのゲストとして一緒にやることになっている。こうご期待。
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10月17日(金)
 
 

プラッサオンゼにて、松田美緒withコーコーヤ+福和誠司ライブ

 この夏頃から松田美緒と音を出す機会が増えているが、どんどん自由度の高い演奏が出来るようになってきており、一回一回のライブを、本当に楽しんでいる。今日の組み合わせは、7月の四天王寺学公演の時のメンバーで、既にいろいろな「基本」が出来ているので、なお良い。
 今日のレパートリーの中では、いくつかの新曲があったのだが、どれも異質なモノばかりで、自分のカラダに入れるまでは結構苦労した。アンゴラの曲、東チモールの曲などは、言葉はポルトガル語でも、音楽的質感はアフリカであったり怪しいアジア系であったり、普段演奏している音楽の内容とは大きく違っていて、しかも参考音源は鬼怒無月さんのアレンジしたものだったりすると、もうどうアプローチしていいのやらサッパリ、というカンジだったのだが、時間をかけて聞き込むことで、最終的には自分なりの気持ちのいいサウンドを再構築することが出来たように思う。
 逆にペルーワルツ(アフロ的シンコペーションのニュアンスのあるワルツ)の1曲については、「昔取った杵柄」というカンジで、快演(怪演?)となった。今まであまり話したことはなかったのだが、実は僕の「プロデビュー」は、三十数年前にNHKのスペイン語講座で音楽を担当されていたラテンデュオ「マリキータとジロー」さんの、10周年記念コンサートのサポートだったのであった。その時に、ラテンアメリカ各国の代表的な歌をひととおりやっており、そのうちの1曲が、代表的ペルーワルツ「es mi peru」という曲だったのである。
 ちなみに、何でマリキータとジローさんのサポートをさせていただくことになったかと言うと、ジローさんが、都の西北大学の「ラテンアメリカ協会」という、名前は厳めしいが内容は「飲む」ということに尽きるという怪サークルの先輩だったからであって、(後輩については当ダイアリーの2006年7月27日の記事を見てつかあさい)このサークルにおいて、僕はブラジル音楽以外に、メキシコのラテントリオからフォルクローレまで、ひととおり手を染めていたのであった。決してラテンはブラジル音楽しか出来ない、というワケではないのだ。どれも、ほぼエセだけどね。

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10月7日(火)
 
 

桑江知子さんコンサート、リハ。

 10月24日の労音大久保会館でのコンサートのリハを、鬼武みゆきさん、江藤有希さんとともに。ちょうどいい時間に終わったので、ちょっと飲んで帰りますか、ということになったところ、「笹子さん、この前の約束、忘れてませんか」と、桑江さん。僕が書いた過去のダイアリーの中に、BBSに寄せられたある質問に僕が答えた部分があって、その内容についての記憶が、桑江さんと僕とで食い違い、どっちが正しいかを「純米大吟醸酒」を賭けて争ったのだが、チェックしたところ桑江さんの記憶の方が正しいことがわかって、「次の機会」に、純米大吟醸酒をおごる、という約束になっていたのであった。
 すっかり忘れていたのだが、無理矢理思い出させられてしまってはしょうがない。ではおごりましょう、ということになって、行きつけの店へ。で、そこにあった純米大吟醸酒が、これまた「龍月」なる、恐らく日本で一番高い値段のついてる日本酒のひとつと思われる逸品。どのくらい高いかと言うと、ネットオークションで一升瓶一本が30万の値段がついたこともある程、高いお酒なのである。しかし、おごると言ってしまっては、しょーがない。オレもオトコだっ。・・・・、とてもとても美味しく、そして少し苦い味がしました・・・。
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10月5日(日)
 
 
静岡県立美術館、ロダン館にてEPOライブ

 ロダンの作品に囲まれてのライブ。ステージのウシロには、かの「地獄の門」がドーンと置いてある。これは世界に8作しか存在していないモノの、7作目なのだとか。重〜い雰囲気の作品で、思わずこちらのレパートリーも、シブ系、思索系?なものが中心になった。美術館では、今までも時々ライブをしていて、実は来月も兵庫県立美術館でコーコーヤのイベント出演があったりもするのだが、どの美術館も、一種独特の雰囲気があって、いつもちょっと不思議な感じのライブになる。
 終わったあと、静岡駅前でちょこっと飲んで(なかなかいいお店でした)日帰り。こういうサクサクした一日も、悪くないね。
  
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10月3日(金)
 
 
Aminショーケースにて小ライブ

 汐留の日テレタワー内の大変オッサレーな中華料理店のテラスが会場。何はさておき、今回のアルバムがこういうリッパな場所でちゃんと大事にされて船出する、ということに、喜びを感じる。
 演奏の方は、つつがなく進行していたのだが、最後に予定していた妹尾武さん作曲のイイ曲をやろうとした直前に、このタワーの名物であるところの長〜い「時報音楽」が始まってしまい、ライブはそこまでで終わってしまった。その「時報」を聞いていたら、なんだか聞いたことのある音が。ああ、これはもしかして、渡辺亮君が制作に関わった時報かも・・・。
 で、早く演奏が終わったので、料理か無くなる前に食わねばっ、と、バイキングの皿に突進。食物を確保して、有田さん、江藤さんと別室にて小宴会。更に全てが終わったあとで、Aminを始め関係者も交えて、今度は新橋地下街の大変庶民的な飲み屋の店先にて、締めの宴会。
1223102231.jpeg こんな所で仕事をして。

1223102232.jpeg こんな所で飲みました。

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10月1日(水)
 
 

aminさんの、ショーケース用リハ


 昨夜までかかったマスタリング作業を終えて、今日からライブモード、とのこと。お疲れ様でした。ショーケースというのは、業界向けプレゼンテーションのための小ライブのことで、今回は、有田純弘さん、江藤有希さんと3人でのサポートである。
 で、リハのあと、その新譜の完成した音を、初めて聞かせてもらった。掛け値ナシで素晴らしい出来だと思う。半年かけて作っただけのことはある。苦労した甲斐がありました。この作品が、出来るだけ多くの人達に聞いてもらえることを、切に願う。(いつも作品を作ったあとは、そう願っておるのですが。)
 それでひとつ感じ入ったことがあって、それは、彼女の柔らかい声に乗せて歌われる中国語の響きの美しさ、ということである。  
 他の我が共演者諸兄姉のパフォーマンスやブラジル音楽などの外国の音楽を聞いていても常々感じることだが、気持ちの良い美しい発音で歌われる言葉は、やはり普遍的に美しい。この点は、日本の一部売れ筋系歌手やロック系歌手などに、しばしば欠落している視点だと思う。米語風に聞こえる日本語は汚い。植民地じゃないんだからやめなさいよ、と言いたくなる。それとも、そうやって我々は文化的植民地人として、新たなるクレオール語を手にする、ということかしら。
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